マクロファージ(macrophage)

抗原の侵入位置に移動してきた単球分化することでできる、自然免疫に関わる白血球。マクロは「大きい」、ファージは「食べる細胞」という意味であるため大食細胞とも呼ばれる。発見および命名はロシアのイリヤ・イリイチ・メチニコフ(Ilya Ilyich Mechnikov)による。*1*2

生体内に侵入した細菌ウイルス、死んだ細胞を取り込む食細胞として働く。マクロファージ内には消化酵素が含まれるリソソームが存在し、これによって取り込んだ病原体などを消化、分解する。*3

また、貪食で分解・消化した抗原の情報をTリンパ球ヘルパーT細胞)に伝える抗原提示細胞としての役割を持っている。ヘルパーT細胞から放出されるINF-γインターフェロン-γ)によって活性化する。*4*5

自らの細胞内で様々な種類の脂肪酸を合成する働きを持つ。マクロファージが生み出す不飽和脂肪酸が、炎症を鎮める働きをすることが確認されている。*6

心臓におけるマクロファージには、心不全を予防するアンフィレグリン?分泌する働きを持つことが確認されている。

心臓では、免疫細胞の一種であるマクロファージが重要で、心筋細胞?の働きを助ける「タンパク質アンフィレグリン?) 」を提供して心臓の機能を維持していることを発見しました。この「タンパク質」を働かなくしたマウスは心不全になりやすく、また心不全を発症したマウスにこの「タンパク質」を投与することで心不全を改善させることに成功しました。*7

マクロファージの種類

活性化の様式によってM1型とM2型に分けられる。通常はM1マクロファージを指す。

マクロファージは機能的にM1型とM2型との2種類存在している事が現在知られており、前者のM1マクロファージバクテリアウイルス真菌類の感染時に活性化し、それらの病原体の排除に重要なTNFNOを産生します。一方で、ある種のマクロファージは寄生虫感染アレルギー応答、脂肪代謝創傷治癒転移等に寄与しており、これらのマクロファージはM2マクロファージと呼称され、Arginase1?Ym1?Fizz1?等の遺伝子M2マクロファージマーカーとして発現します。*8

マクロファージには上記以外の種類も存在することが示唆されている。*9

がん細胞分泌するIL-6M-CSF?PGE2などによってマクロファージがM2型へ分化させられる。M2型のマクロファージはTAMと呼ばれる、がん細胞に都合の良い働きをするマクロファージとなることが確認されている。

マクロファージとがん細胞を一緒に培養すると、がん細胞によって分泌される IL-6, M-CSF?, Prostaglandin E2 などによってマクロファージが活性化をうけ、M2 型へと分化することがわかりました。つまりがん細胞が自分自身に都合の良いようにマクロファージを教育しているのです。一方、M2 型に分化したマクロファージからは、VEGF, IL-8, bFGF?, HGF?, EGF?, PDGF などの血管新生因子や細胞増殖因子が産生され、がん細胞の増殖に好都合な環境が形成されます。*10

炎症疾患では、単球は粘膜炎症惹起マクロファージ?になりTNF-αを大量に産生して炎症病態を悪化・拡大させます。TNF-α阻害剤は炎症性腸疾患治療薬として奏功しています。それら疾患以外にも、単球由来のマクロファージ破骨細胞は、肥満動脈硬化組織の繊維化、骨粗鬆症などへの積極的関与が報告されています。*11

また、組織の部位ごとにマクロファージの種類が異なるとされる。

では肺胞マクロファージ肝臓ではクッパー細胞腹腔?では腹腔マクロファージ?などとなる。*12

文献一覧
*1 東邦大学|マクロファージ|バーチャルラボラトリ: http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/macrophage/introduction/int-01.html
*2 技術評論社 西村尚子 知っているようで知らない免疫の話 ヒトの免疫はミミズの免疫とどう違う?(2010/8/25)
*3 技術評論社 西村尚子 知っているようで知らない免疫の話 ヒトの免疫はミミズの免疫とどう違う?(2010/8/25)
*4 摂南大学薬学部 微生物学研究室 感染と防御: http://www.setsunan.ac.jp/~p-bisei/Lecture_files/NID13-04.pdf
*5 オプソニン作用: http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/opso.pdf
*6 「マクロファージがつくる不飽和脂肪酸が、炎症を収めるのに重要であることを発見」炎症の慢性化を抑え生活習慣病を防ぐ、新しい治療標的の可能性: http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20161230.pdf
*7 共同発表:心不全の新しいメカニズムを解明~新しい治療法の開発に期待~: http://www.jst.go.jp/pr/announce/20170411-2/index.html
*8 マクロファージの skewing に重要な分子の解明 審良静男(大阪大学免疫学フロンティア研究センター): http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/research/upload_img/Akira_NatImmunol_201008_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E8%A7%A3%E8%AA%AC.pdf
*9 難病 “線維症”の発症原理の一端を解明 -発症に関与する細胞 SatM を発見、これを標的に新規薬開発に期待-: http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/research/upload_img/commentary20161222_j.pdf
*10 腫瘍微小環境におけるマクロファージの役割 病理学から見たがん治療へのアプローチ 熊本大学大学院 生命科学研究部 細胞病理学分野 竹屋 元裕: http://pathology.or.jp/ippan/pdf/takeya30.pdf
*11 「がん悪化や炎症を主導するマクロファージの源となる細胞を発見」【樗木俊聡 教授 】 | プレスリリース | 国立大学法人 東京医科歯科大学: http://www.tmd.ac.jp/press-release/20170517/index.html
*12 技術評論社 西村尚子 知っているようで知らない免疫の話 ヒトの免疫はミミズの免疫とどう違う?(2010/8/25)


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このページの最終更新日時: 2017-09-11 (月) 09:23:14